Supercaliberのパフォーマンス

Supercaliber Gen 2がTrek史上もっともレースに適したバイクである理由

Trekのパフォーマンスリサーチエンジニアは、前例のない業界初のテストを実施して、Supercaliberのパフォーマンス向上を追求した。その走りがどれほど改善したのか、詳しく読んでみよう。彼らはラボとトレイルで大規模なテストを行い、大きな主張を裏付ける科学的根拠を示した。そして、Supercaliber Gen 2が前作よりも快適で効率的であるだけでなく、ハードテイルよりもさらに効率的であることもわかった。

Supercaliber Gen 2では、TrekのMTBエンジニアが独自のIsoStrutデザインをさらに進化させ、効率性、操作性、快適性を大幅に向上させた。

Gen 2のトラベルを33%増やしたことで、アクスルが全体的により多く動くようになったのが一目でわかる。サグ位置からのコンプレッションとリバウンドの両方で、だ。衝撃を受けるとより多く上向きに縮み、深い轍やバンプの下り斜面ではより多く下向きに伸びるようになった。さらに、レバー比を18%向上させ、シールとの摩擦により少ない力で打ち勝てるようにし、ショックの応答性を高めた。そして、RockShoxのエンジニアと協力して、レースでペダリング効率と路面への反応をバランス良く発揮できるよう、コンプレッション側のダンピングをチューニングした。

これでライダーは、より楽に速く走れるようになり(効率的)、高いトラクション(操作性)とスムーズな乗り心地(快適性)が得られるようになった。Trekパフォーマンスリサーチのエンジニアは、これらの性能上の利点を説明するために、ラボとトレイルの両方で前例のない一連のテストを実施した。

XCレーサーなら誰でも、木の根や岩の上でのペダリング効率が最重要であるのを知っている。サスペンションは推進力を保ち、タイヤを常に地面に接地させ、不快で破壊的なフレームの動きを抑えるために重要な役割を果たす。つまり、優れたサスペンションは、効率性、操作性、快適性を同時に向上させるのだ。


ラボでトレイルを再現

Supercaliberの悪路でのペダリング効率を、Trekパフォーマンスリサーチラボトレッドミルでテストした。トレッドミルなら、温度、速度、地形を正確に制御しながら、通るラインや操作のばらつきを避けられる。地形のプロファイルを作成するため、まずショックセンサーを装着してTrekトレイルを走り、木の根の多いセクションでサスペンションの動きを測定。このデータをもとに、トレイルでのサスペンションの動きに合わせてトレッドミルの踏面を調整した。

効率性
呼気ガス測定用マスクによる測定


トレッドミルの踏面をトレイルの路面に近づけた後、VO2 Master社の呼気ガス測定用マスクを用いて、ライダーとSupercaliber Gen 2、Gen 1およびハードテイルの全体的なシステム効率を測定した。このマスクはライダーの酸素消費量を測定するもので、ライダーが発揮する総エネルギーの指標となる。

なぜ効率比較をするのに、パワーメーターだけでは十分でないのか? パワーメーターは、バイクを進ませるのに使われるエネルギーだけを計測するもので、ライダーが繰り返し受ける衝撃を吸収したり、悪路でバイクを操作したりするための労力は無視される。したがって、酸素消費量の測定が、どのバイクが最速かを決定するもっとも確実な方法なのだ。

一貫性のある有効な酸素消費量を測定するため、ライダーの機能的閾値の60%のパワーで5分間、時速16kmで走行した。これは相当な労力だが、持続可能ではある。データを精査して、主要指標(酸素消費量)と副次的変数(心拍数やクランクパワーなど)の安定性を確保し、疲労が蓄積していないことを確認した。さらに一貫性を持たせるため、ショックのサグは29%で統一し、Trekサスペンション計算機を用いてメーカー推奨のセッティングに調整した。


テスト手段はもう十分 - 早く結果を見せて

この条件下でのテストでは、ペダリングを同じとした場合の効率はSupercaliber Gen 2がSupercaliber Gen 1よりも6%、ハードテイルよりも23%効率的だった。 

快適さ
3Dモーションキャプチャーによる測定


Supercaliber Gen 2がもっとも効率的なバイクと評価されたのは、主に新しいIsoStrutサスペンションがもっともスムーズな乗り心地を提供したから。荒れた路面では、段差を吸収(ショックのスプリング)し、そのエネルギーを発散(ショックのダンピング)させることで、バイクの接触点3箇所(グリップ、ペダル、サドル)に伝わる動きが最小限に抑えられている。つまり、ライダーが衝撃を吸収してバイクの挙動を制御する際に、使う筋肉のエネルギーを減らせる。もちろん、もっともスムーズな乗り心地のバイクは快適性が最高でもある。

これらの効果を調べるため、3Dカメラを12台並べ、バイクとライダーの体の至るところにマーカーを設置。1秒間に360回もデータを取得できるようにした。それぞれのバイクでトレッドミルの上を60周し、記録したデータを単一の平均ラップへと平均化して、ラップ間のずれを最小化させた。

まずはボトムブラケット周辺に着目した。ここは、脚が垂直方向の衝撃吸収と、効率的なペダリングの維持を最初に行う部位である。上のプロットでわかるように、Supercaliber Gen2は、ボトムブラケットにおけるフレームの上下動を15%も減少させた。これは、ライダーが足に受ける衝撃がより少なく、体を安定させるよりもペダリングにより多くのエネルギーを注げることを意味する。

次に、サドルとライダーの骨盤(仙骨)との相対的な動きを調べた。この動きは、ペダリングの周期的な影響を除けば、ゼロであるのが理想的だ。この相対距離がより大きいと、バイクがライダーをサドルから押し上げているか、ライダーが脚を使ってサドルの周りで体を動かしていることを示唆している。いずれにせよ、ペダリング効率は悪い。下のプロットでわかるように、Supercaliber Gen 2は、サドルと骨盤との相対的な動きが前作よりも22%減少している。

操作性
高速度カメラによる測定


バイクの速さはあなたの操作次第である。サスペンションの主な役割は、路面の凹凸にタイヤを追従させ、トラクションと操作性を高めること。さらに、トラクションが高まればパワーをより効率的に伝えてバイクを前み進められる。

このビデオは、Supercaliber Gen 2(青)とSupercaliber Gen 1(オレンジ)のアクスルの動きを比較したもの。アクスルのマーカーを重ね合わせると、Gen 2のリアホイールの方がより速く、安定した状態を保っており、衝撃を受けた後もよりすばやくトラクションを回復させているのがわかる。

サスペンションの動き
ショックセンサーによる測定


Supercaliber Gen 2がいかにしてより優れた効率性、操作性、快適性を実現したかを理解するため、IsoStrutに位置センサーを取り付け、5000回/秒のサンプル収集周期でショックの変位を測定した。計算したところ、リアアクスルでのサスペンションの使用限度域はこのようにプロットされた。ここから、ショックのスプリングとダンパーがどのように機能して、同じ走行条件下でホイールを動かしているのか、その全体像が把握できる。このオーバーレイでは、Supercaliber Gen 2の新しいIsoStrutが、この走行シナリオで大幅にアクティブなサスペンションを実現し、リアホイールが68%遠く、71%速く動かしているのがわかる。これはサグ位置からより多く縮み、かつ伸びることを意味し、衝撃吸収と路面追従性(トラクション)の両方にとって重要となる。

ここまでのテストでは、荒れたセクションでのペダリング性能を調査した。XCレースにおいて、重要な要素となるためだ。しかし、現代のXCコースでは、テクニカルなセクションやロックガーデンを自信を持って駆け抜けられる走破性の高いバイクが、ますます高く評価されている。Supercaliber Gen 2がこのような地形でどのような性能を発揮するのか調べるため、私たちはラボを離れ、プロテクターを手に森へと向かった。

トレイルでのテスト

まず、Trek本社のマウンテンバイクトレイルで岩だらけの下りを見つけ、高解像度の3Dレーザースキャナーを使ってその地形を正確にマッピングした。このセクションは長さ約8メートル、傾斜15%の下り坂で、最大180mmの段差やドロップがいくつもあった。

快適性と効率性
3Dモーションキャプチャーによる測定


巨大な三脚、特注の樹木用マウント、数十から数百メートルものケーブルを使い、ラボに並べたように12台の3Dモーションキャプチャーカメラを森の中に設置。この画期的なテスト技術によって、トレイルでのバイクの動きと位置を正確に再現できた。 

トレイルはラボほど環境を制御できないので、進入速度やライン選択などの変動要因を管理するためにあらゆる努力を払った。複数回の走行でバイクを3Dトラッキングしたおかげで、これらの要素を測定し、類似した走行をグループ化して、正しく比較できた。最終的に、平均進入時速21km+/-0.7(標準)で、各バイクの5回の走行を分析した。バイクとトレイル自体に取り付けたマーカーで、各バイクがセクションへ進入する際の横位置を計算したところ、10cm以内で一貫していた。 

バイクの可動部を個別にトラッキングして、横方向への揺れ、サスペンションの使用量、前進、走りのスムーズさ、路面追従性など、あらゆる面でSupercaliber Gen 2の違いを調べた。次のビデオでは、レーザースキャンしたトレイル路面に対してリアアクスルがどのようにトラッキングされたかを説明し、比較のために全走行のアクスル軌道を重ねて表示する。 

リアアクスルとフレームのトラッキングから、空間におけるバイクの正確な位置と速度が判明した。走行ラインに微妙なばらつきがあり、トレッドミルと比べて反復回数が少なかったためトレッドミルと同じ分析を繰り返すのは難しかったが、データを他の手法で分析しても同じ傾向が裏付けられた。またしても、Supercaliber Gen 2がいかにスムーズな走りを実現し、ペダルを踏み込むエネルギーをより多く残しておけるかが明らかになった。

またSupercaliber Gen 2は障害物を乗り越えても勢いは大きく保たれ、終盤の孤立した岩の上でもそれを容易に確認できた。この岩の上を走行するバイクを見ると、Gen 2の優れたサスペンションが減速せずに衝撃を和らげている様子がわかる。同じ距離での速度変化は最小限に抑えられており、Gen 1やハードテイルと比較すると、進入から出口までに失われる速度も全体的に低かった。

操作性
高速度カメラによる測定


高速度カメラを使用すると、アクスルの動きを正確に追跡し、タイヤが路面から離れたり、再び接したりする際のトラクションを測定できる。スライダーレールを使い、身軽なエンジニアがOKの出るまで何度も撮影を繰り返して、IsoStrutの動きを接写した。また、地面低くに設置した三脚での映像から、キャリブレーションした2Dモーショントラッキングが得られた。

ビデオの通り、Supercaliber Gen 2のホイールは、大きなドロップの着地で衝撃を受けたあとも、路面をより細かく追従し、トラクションをよりすばやく回復させた。中でも2つの大きなドロップでは、他のテストバイクよりも14~50%すばやくトラクションを回復させている。トレイルの追従性が良くなるというのは、ブレーキングとステアリングの操作性が向上するということだ。

サスペンションの動き
ショックセンサーによる測定


これらの性能向上の根源が、新しいIsoStrutサスペンション。ここでも位置センサーを用いて測定した。ラボと同じように、サスペンションの使用限度域でショックの動きを測定したところ、Supercaliber Gen 2でトレイルを下るとよりアクティブに動き、Gen 1よりも40%多く、31%速くストロークすることがわかった。重要なのは、動的なサグ位置の上下により大きな可動域があった点だ。それぞれ衝撃吸収性と路面を追従するトラクションの両方が大幅に向上したことを示している。実際、Supercaliber Gen 2は、Gen 1の最大トラベル(ボトムアウト)を超えて縮み、さらに大きな衝撃や着地に対してもまだトラベルに余裕があった。

概要

著者について

ポール・ハーダーはTrekの研究開発のリードエンジニア。2007年にウィスコンシン大学マディソン校で機械工学の修士号を取得。以来、科学とイノベーションを通じてライドをより良いものにするべく、キャリアを捧げてきた。

ウェンディ・オックス博士はTrekのバイオメカニクス研究エンジニア。ウィスコンシン大学マディソン校で医用生体工学の博士号を取得している。

カイル・ラスは、生体力学のリードエンジニアで、2011年からTrekでライダーとバイクの相互作用を研究している。人間の動きとサイクリストの生理学を理解することに、オハイオ州立大学で修士号を取得しているときから情熱を燃やしてきた。